日本最大のメガソーラー発電所を訪問 [ 2012/ 2. 6 記:関根敏伸]
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エネルギー政策の方向
昨年の震災と福島原発の事故以来、急速にエネルギー政策の方向展開が求められています。
原子力への信頼性に厳しい見方がされる中、定期点検を迎えた原子力発電所の再稼動が難しい局面を迎えております。原発の全廃といった議論もされますが、そのことは結果として国民生活と国内経済に大きな影響を与えてしまうことから、冷静に現実的な対応を考える必要があると考えます。
しかし、いずれにせよスケジュールを明確にしながら電力に占める原発の割合を一定範囲に抑え、その分を再生可能エネルギーに置き換えていくことが必要になってきます。環境への負荷の面や、原油や液化天然ガスのほぼ100%を海外から輸入している現状での安全保障の観点からも先送りは出来ない状況です。
メガソーラー発電所
先月25日に、大阪堺市にある日本最大の太陽光発電所を訪問してきました。
今までの太陽光発電は、家庭内の電力自給を中心に余剰になった分を売電する、というシステムで普及してきましたが、昨年作られた「電力の固定価格買取制度」によって、大規模な商業用発電(メガソーラー)促進の可能性が大きく膨らんできました。
この制度によってコスト採算性が大きく改善されることになり、電力会社を中心に様々な企業や自治体で設置に向けた研究が進められています。
この発電所は関西電力と堺市が共同で設置したもので、21ヘクタールの土地に敷き詰められた7万枚のパネルにより、発電出力1万kWが可能となります。 一般家庭3,000軒の電力を賄い、CO2排出量は年間で4,000tの削減効果があるといわれています。
太陽光発電のコスト
建設には様々なコスト低減策が取り入れられています。パネルの設置角度を通常の30度から15度にすることにより、風などからの影響を抑え、耐急性を増すと同時にコンクリート使用量を大幅に減らしています。
また基礎部分に太陽電池を直接取り付けることで鋼材使用量を削減し、50億円といわれた総費用を35億円まで圧縮しています。このことにより、出力1kW当たりのコストが35万円と、家庭での平均的太陽光発電コストの58万円と比較し大幅なコスト削減が実現しています。
大量の再生可能エネルギーを電力系統に受け入れるには電力の品質安定が前提となりますが、そのためには蓄電技術の向上も必要です。これが難しい場合は、再生可能エネルギー受け入れのための新たな火力や水力発電所の建設が必要になる、との説明を受け現実的な課題も直視させられました。
今後の太陽光発電の普及には、一層のコスト削減とパネル品質の効率化が課題です。また議論が始まっている「発・送電分離」の具体化や膨大な土地の確保も必要となります。この発電所は大阪府所有の甲子園球場5個分の産業廃棄物処理場に作られていますが、将来の除草対策などの維持管理の費用も必要になってきます。
さらに日本最大のメガソーラー発電所も、発電量だけの比較では原発一基分の100分の一しかないことになります。日本の電力10社は2020年までに、全国30箇所で14万kWのメガソーラー発電を計画中ですが、これが実現できたとしても、日本国内の膨大な電力需要を賄うには、現実的には様々な発電源を開拓しながら、ベストミックスで日本の電力自給を考えていかなければなりません。
岩手県のエネルギー自給率
岩手県は、風力、地熱、小水力、太陽光、木質バイオマスなどの再生可能エネルギー資源の宝庫といわれています。
しかしながら、エネルギー自給率から見たときその自給率はわずか25%に過ぎません。電力の75%を他の自治体からのいわば輸入に頼っていることになります。
岩手県では震災からの復興計画の中に、特区を利用した「再生可能エネルギー導入促進(*注)」を大きな柱に位置づけておりますが、電力自給率向上の面と、創造的復興による新しい県土の構築という面からも、是非とも実現していかなけらばならない政策と考えます。
岩手県では2020年には太陽光発電を現在の4倍にする目標を固めています。先ごろは、県内のメガソーラー適地候補地50ヶ所の公表を行い、企業などとのマッチングに乗り出しています。
同じ被災地の宮城や福島では、今後建設される復興住宅の数万世帯に太陽光パネルを設置する大規模は計画をもっており、宮城にはこれを見込んでの日本最大規模の太陽電池の工場進出も噂されています。
岩手県も特色ある再生可能エネルギー拡大への施策を早急に打ち出し、復興の目玉としていくことが必要となります。
↑(*注)本文掲載{2012. 2.16}以降の補足事項:2012. 3.15 岩手県再生可能エネルギー復興推進協議会 設置
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